カテゴリ:エッセイ・短編( 2 )

白い滝

霊能者を名乗る年配の女性に霊視をしていただいた。といっても頼んだわけではないし、お金を要求されたわけでもない。いきなり路上で、僕に言葉を授けたいといわれた。びっくりしてその人の顔を見た。70歳前後だろうか、背の高い清楚な感じの女性だった。とても真剣な表情だったので、何事かと思い、何でしょうかと答えた。その霊能者は僕の頭の上に白い滝が見えると言った。あなたはこの世の人ではなく、半分は聖なるもの、この先何も恐れる必要はありませんと言って華奢な手で僕の手を強く握った。とても強い力だったので、再びびっくりした。その間数分の出来事だった。僕はありがとうございますと言ってその場を立ち去った。一体何が起こったのだろう。どうして突然そんなことを僕に告げようとしたのだろう。本当に白い滝が見えたのだろうか。
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by juneberry120 | 2017-05-13 01:19 | エッセイ・短編

プシュケとエロス

 美しいプシュケは恋人のエロスを愛していましたが、その姿を見ることができませんでした。そのためいつもエロスに疑念を持っていました。エロスは自分を愛していないから姿を見せないのではないかと思いました。プシュケはエロスの愛を信じることができなかったのです。

 エロスはまたの名をキューピットといい、彼の矢は射た相手を恋に落としてしまうことができました。プシュケは猜疑心の苦しみから逃れるために、エロスが寝ている間に矢を盗み出し、エピメーテウスの胸を射て、自分に恋させようとしました。エピメーテウスはたちまちのうちに、プシュケのとりこになり、プシュケに結婚を申し込みました。プシュケは嬉しさのあまりすっかりエロスのことを忘れてしまったのです。

 ある日プシュケはエロスの夢を見ました。夢の中でプシュケはエロスから恋の矢を射られて、深い悦びに包まれました。目を覚ますとそこにいたのはエロスではなく、自分が矢を射たエピメーテウスでした。そのとき、はじめて自分が本当に愛しているのはエロスだと気がつきました。

 一方、エロスは目を覚ますと、プシュケがいなくなってしまったことに気づき、悲しみに暮れました。神の掟により、エロスがプシュケと結ばれるためには、神の許しが得られるまで姿を隠さなければなりませんでした。エロスは神の国に属していたからです。そのことをプシュケに話すことも許されていませんでした。そして、エロスは悲しみのあまり、死んでしまったのです。

 プシュケは急いでエロスのもとに戻り、ろうそくに火をつけ、エロスの死を知りました。エロスは夢に見た通りの姿でした。そのとき初めて、自分は3つの裏切りをしたことに気がつきました。エロスへの裏切り、エピメーテウスへの裏切り、そして自分自身の魂への裏切りです。

 プシュケは手に持っていた矢をエロスの胸に挿し、涙を流しました。涙がエロスの顔にぽとりと落ちました。たちまちのうに、青白かったエロスの顔に紅がさし、閉じていた目が開きました。プシュケはエロスを抱きしめ、変わらぬ愛を誓ったのです。こうしてプシュケはようやく自分の本当の魂と愛を手にすることができました。

 プシュケとはギリシア語の魂のことです。そしてエロスは愛を意味します。愛とは姿形や言葉ではなく、目に見えないものです。本当の愛を得るためには、愛する人の魂を信じることが大切だというお話です。
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by juneberry120 | 2008-11-29 11:37 | エッセイ・短編