イン・ハー・シューズ(★★★☆)

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IN HER SHOES ★★★☆(3.5)
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 学習障害の一つである難読症のマギー(キャメロン・ディアス)は、スタイルがいいという以外に何の取り柄もない。一方、姉のローズ(トニー・コレット)は弁護士としてバリバリ仕事に励んでいる。美人とはいえないが恋仲になった上司に夢中だ。そしてなかなか定職につけない妹をいつも心配していた。
 ある日、マギーが自分のアパートを追い出されてローズのアパートに転がり込んでくる。ローズは世話の焼けるマギーを何とかして職に就かせて家から追い払おうとするが、なかなかうまくいかない。そんなある日、妹が一人でいるところに恋仲の上司がやってきた。なんとマギーはローズの恋人と寝てしまうのである。そんなところにローズが帰ってきたのだからさあ大変。もちろん、妹をたたき出し、上司との恋も破局。そして勤めていた法律事務所を辞めてしまう。
 たたき出されたマギーは小さい頃に音信不通になっていた祖母のエラ(シャーリー・マクレーン)を頼ってフロリダの老人ホームに行く。お金をたかりに行ったつもりだったのに、老人ホームで働くことになり、元大学教授のある老人との出逢ってからマギーは少しずつ変わっていくのだった。
 ローズは靴を集めるのが趣味で、マギーは勝手にローズの靴棚から自分にぴったり合いそうな靴を探しては履いてしまう。本当に自分にぴったり合う靴はあるのだろうか。「イン・ハー・シューズ」というタイトルはこんな象徴的な場面から取られたのだろう。マギーもローズも最後には自分だけの「靴」を見つけたのだった。
 "in her shoes"には「彼女の身になって」という意味もある。表面的には救いようのないほどのだめな人間に見えても、彼女の身になって考えれば、その心の奥に秘められた光を見つけることができる。そんな意味にも思えてくる。



 僕が鳥肌が立つほど感動したのは、マギーと寝たきりになってしまった目の悪い元教授との出逢いの場面だ。彼はマギーに詩を読んでほしいと頼むのだが、彼女は読むことができない。彼は彼女が難読症であることをすぐに見抜いてしまう。「君は難読症だね。」映画を見ている僕たちもここで初めて彼女が「難読症」であること、それゆえにマギーが社会に認められず、さまよってきたことを理解するのである。
 元教授の老人は時間をかけてゆっくりマギーに本を読ませる。小さな声で少しずつゆっくり本を読み始めるマギー。その本はe.e.カミングスの詩だった。その詩の一言一言が胸に染みていく。そして老人はマギーに詩の意味を尋ねる。マギーはそれに一つ一つ答えていく。そして老人は「よくできたね。Aプラスだよ。」とマギーにいう。そのときのマギーの表情! それまでに見せたことがないほどの喜びだった。きっと「Aプラス」なんていう成績をもらったことがなかったのだろう。そのとき、マギーは変わったのである。
 そしてこの映画のラストシーンはローズとローズをずっと慕っていた同じ法律事務所に勤めるサイモン(マーク・フォイアスタイン)との結婚式だ。ローズもまた、ようやく本当に愛し合える人と出会えたのだった。その結婚式の場で、マギーは詩を朗読するのだ。難読症のマギーが詩を読むなんて、誰も想像もしたことがないことだった。
 その詩はまさに老人が彼女に教えてくれたe.e.カミングスの詩だったのである。老人ホームで静かに死んでいった老人がマギーに残してくれたもの。それは「詩の心」だったのかもしれない。
 マギーが朗読したのは「i carry your heart with me(あなたの心とともに)」という詩である。ネットで検索すると山のように出てくる。それぐらい有名な詩だ。何度も読み返すと、詩の秘めた力を心から感じさせてくれる。(こんなに純粋に一人の人を想い、愛する心が伝わる詩なんてあっただろうか。。。。)



    i carry your heart with me -e.e.comings
        あなたの心とともに(E・E・カミングス)


i carry your heart with me(i carry it in my heart)
私はあなたの心とともにいる(私の心の中に)

i am never without it
私は決して離れない
(anywhere i go you go,my dear;
(愛しい人よ、私の行くところはいつもあなたがいる
and whatever is done by only me is your doing,my darling)
愛する人よ、私が一人で何かをするときもいつもあなたがいる)

                i fear
                私は...
no fate
運命なんて恐れない 
(for you are my fate,my sweet)
(だって、あなたが私の運命、私の愛なのだもの)

i want no world
私は世界など欲しくない 
(for beautiful you are my world,my true)
(だって、あなたが私の美しい世界、私の真実なのだもの)

and it's you are whatever a moon has always meant
月がささやいてくれたものすべて、それはあなた
and whatever a sun will always sing is you
太陽が歌ってくれるものすべて、それはあなた

here is the deepest secret nobody knows
ここは誰も知らない深淵なる秘密 

(here is the root of the root and the bud of the bud
and the sky of the sky of a tree called life
(ここは人生と呼ばれる木の
根っこの中の根っこ、つぼみの中のつぼみ
そして空の中の空

;which grows higher than the soul can hope or mind can hide)
それは魂が望むよりも高く、心が隠れられないほど高く伸びていく)

and this is the wonder that's keeping the stars apart
これが一つ一つの星が輝き続ける神秘

i carry your heart(i carry it in my heart)
私はあなたの心とともにいる(私の心の中に)

(翻訳 - juneberry)

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by juneberry120 | 2005-12-17 02:12 | 映画
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